2013年9月30日月曜日

ガソリンストーブ4(プリムスについて)

ガソリンストーブの話を続けます。今回はプリムスについてです。

2013年9月現在、イワタニプリムスのホームページに掲載されているガソリンストーブは、エクスプレスVFスパイダーストーブ(P-134VF)1種のみです。

昨年くらいまでは、マルチフューエルEX(P-MF-EX)という、ガソリンや灯油などの液体燃料の他に、T型ガスカートリッジ(OD缶)も使用できるマルチフューエル(MF)タイプのモデルも取り扱っていたと思いますが、ラインナップから消えたようです。

しかし海外のプリムスのサイト< https://www.primus.se/ >を見ますと、マルチフューエルEXは健在で、他にも3種のガソリンストーブがあり、全てMFタイプのようです。

2013年9月時点で確認できたガソリンストーブは下記の4種。
・MultiFuel EX
・OmniFuel
・OmniLite Ti
・Gravity MF

上記以外にも、旧ETAシリーズには、ETA Power MFというMFのラインナップがありました(日本での取り扱いは無し)。


Primus ETA Power MF

新ETAにMFは無いようですが、海外プリムスサイトの交換アクセサリーのページをよく見てみますと、ETA Power MF Kitというマルチフューエル対応用キットがラインナップされています。

ETA Power MF Kitですが、写真を見る限りでは、燃料ボトル、ポンプ、グリス、交換用ジェット、工具、プレヒート用のパーツがセットになっているようです。Gravity MF Kitというものもあるようですが、今のところこれらのキットをAmazon.comやAmazon.co.ukで見かけたことはありません。

さて、冒頭に記した日本で取り扱いのあるP-134VFというモデルについて。

「VF」は、VariFuelの略で、ガソリンだけではなく灯油など複数の液体燃料が使えることを意味しますが、MFとは異なり、ガス(OD缶)には対応しません。VF用ポンプは型番が732240で、MF用ポンプの型番は732231で異なります。

VF用ポンプはホースをカプラーで繋ぎ、燃料調節つまみがポンプ側についています。

一方、MF用ポンプですが、ホースとの接続部分がOD缶のオスネジになっています。つまりOD缶に接続できるストーブであれば、構造上、接続できてしまいます。推測ですが、マルチフューエルEXがイワタニプリムスのラインアップから消えたのは、MF用ポンプの流用で、想定外の組み合わせに対する懸念があったからかもしれません。


プリムスの燃料ポンプ。左がVF用(732240)。右がMF用(732231)
VF用(左)はポンプ側に燃料調節つまみがついています。
MF用(右)の場合、ポンプ側につまみは無く、ホース側につきます。

MF用ポンプとホースの接続部分

P-134VFのポンプとホースの接続部分

現在イワタニプリムスでは、液体燃料専用のP-134VFの他に、ガス(OD缶)専用のP-133Sという、2種類のスパイダーストーブをラインナップしています(五徳の大きさは若干違うようです)。いずれも分離型ストーブとしては軽量なので魅力的なのですが、MFに一本化してくれたらもっと良いですよね。

ですので、P-134VFとETA Power MFのストーブをニコイチにして、P-134MF(勝手に命名)にしてみました。

P-134VFにETA Power MFのホースとポンプをつけてMF化したところ。

MF仕様に改造したとしても、ガソリンと灯油、OD缶を使い分けるためには、ジェットの交換をしなくてはいけないので、それほど便利じゃないという悩ましい状況だったりします。またニコイチにしたことで、余ったETA側がVFになってしまい不憫です(笑)

ETA Power MFですが、以前は円高の影響などで安く手に入りましたが、最近は流通量が減ってきており、オークションに出たとしても値段が高めなので、部品取り用として気軽に使えるものではないです。おとなしくニコイチは諦めて、国内流通のP-134VFとP-133Sの両方を買って、状況に応じて使いわけた方が良いのでは?という思いに至ったりします(笑)

これまで書いてきたように、プリムスのETA用ストーブとスパイダーストーブは共通部分が多いです。あとJETBOIL社のヘリオスにも同じストーブが使われているようです。

P-134VF(左)と、ETA Power MFのストーブ部分(右)

P-134VFを分解したところ


最後に、プリムスMFポンプの流用(悪用?)について。

先に書いたとおり、MFポンプはOD缶のオスネジと同じ形状をしているので、ガス専用ストーブが接続できてしまいます。しかし通常ガス専用ストーブは、液体燃料を気化させる機構を持たないため使用できません。

一部のガスストーブには、液体燃料を気化させるための予熱管がついている場合があります。これらはOD缶の倒立利用(液出し)に対応するためのものだと思われますが、この手のタイプであれば、ガソリンの気化も可能かもしれません。ただし予熱管のプレヒートをどうするか、という問題があります。ガス専用ストーブには、液体燃料でプレヒートするための燃料の受け皿が備わっていないためです。

それでもテストをしてみました。

中国製ガスストーブ(Bulin社製)をストームクッカーにセットして、プリムスのMF用ポンプを付けて、予熱管周辺をアルコールで無理やりプレヒートした後に、ホワイトガソリンの点火を試みました。

プレヒートまでは良かったですが・・・

結果は、プレヒートが足りないのか、ジェットのサイズが大きいなどで、ガソリンが出すぎているのか、大きな火柱が立ちました。何度か試しましたが同じ結果で、夕刻に家のベランダでテストしていたこともあり、近所から火事と思われるのも困るため、本燃焼に漕ぎつけずに中止しました。(いつでも消火できる体制でテストしましたが、危ないのでくれぐれも真似をしないようにお願いします。)


2013年9月4日水曜日

ガソリンストーブ3(コールマンの小型ストーブについて)

今回はコールマンのガソリン式小型ストーブ(ワンバーナー)について書きます。

コールマンは、20世紀初頭に創業したアメリカのアウトドア用品メーカーで、創業当初はガソリン式ランプの販売がメインだったようです。ちょうど電灯が普及していった時代だと思いますが、ガソリン式ランプは、屋外作業用の灯りとして、または停電時の備えとして需要があったようです。

1920年代になると、自動車が普及してきて、オートキャンプがブームになり、現在のツーバーナーの原型となるキャンプストーブが作られたようです。

1940年代には、GIポケットストーブという軍事用ガソリン式ストーブの製造を手掛けるようになり、一部民生用も販売されましたが、今のようなアウトドア用品メーカーに転身するのは、もう少し後の1950年代後半になってからでした。

1960年代に入り、スポーツスターという愛称のワンバーナーが登場しました。現在では後継のスポーツスターⅡ(508A)というモデルが販売されています。

1970年代半ばには、スポーツスターより小型のワンバーナーが作られるようになり、EASI-LITEストーブとか、ピーク1ストーブ、フェザーストーブという愛称が付けられています。これらの系統では、442-726J(フェザーストーブ)というモデルが現行機種として残っており、80年代のピーク1ストーブを彷彿させるような形状をしています。


現行のコールマンフェザーストーブ(442-726J)
コールマンはプレヒートは不要で扱いやすいです。
左が1984年製のピーク1ストーブ(400A701)
右が現行のフェザーストーブ(442-726J)

現行のフェザーストーブと、80年代のピーク1ストーブは使用部品も似通っていますが、大きな違いは燃料調整レバーの数です。現行が1レバータイプ、80年代のものが2レバータイプとなっており、後者は細かい火力調整が可能という事で、現行のフェザーストーブを2レバータイプに改造する方が後を絶たないようです(笑)


具体的には形状の違うジェネレーターを付けるために、ジェネレーターを曲げたり、ブラケットを自作したり、バーナーボックスをヤスリで削ったりするようです。

それでは2者のバーナーボックス部分の違いを見てみましょう。


現行のフェザーストーブ(442-726J)のバーナーボックス部分を分解したところ。

ピーク1ストーブ(400A701)のバーナーボックス部分を分解したところ。

バーナー部で形状が異なる部品は3点。上が442-726J、下が400A701

私も改造を試してみましたが、ジェネレーターの曲げが浅かったのか、締めつけた際に、ジェネレーターのテーパー部分を潰してしまいました。


出来心でちょっと試しただけなのにジェネレーター破損(!)

2レバータイプのジェネレーターは消耗品と言えども3,500円前後と高いので、わざわざ改造するよりは、2レバータイプの昔のピーク1ストーブをオークションで安く手に入れた方が早い気がしました。今回出来心でジェネレーターを破損させてしまい、手痛い損失になってしまいました。

ちなみにコールマンのパーツですが、名称や型番が同じでも形状が違ったり、形状が同じでも型番が違ったり…という事があるようです。今回比較した2者のパーツリストも載せておきます。

例えばバーナーボックスは型番が同じですが、先に載せた写真の通り、形状は異なります。

442-726Jのパーツリスト
400A701のパーツリスト


最後に…
フェザーストーブは、わざわざ改造をしなくても魅力あるストーブだと思います(笑)。ガソリン式タンク一体型の小型ストーブというカテゴリでは、オプティマス123Rスベアとともに、貴重な存在になりつつあります。

タンク一体型小型ストーブの宿命としては、燃料タンクの容量に限りがあるため、状況によって燃料ボトルを別途用意したり、燃料を移し替えるための漏斗(ろうと、じょうご)が必要になります。結局、装備全体としては小型・軽量にはならないため、登山でこのストーブが選ばれる事はあまり無いようです。

それでも比較的安価ですし、プレヒートが不要で扱いやすい品ですので、ガソリンストーブの入門機として最適ではないでしょうか。ガソリンストーブは寒さに強いので、秋~冬のバイクツーリングに向いていると思います。冬にツーリングなんて行かないよと言われてしまいそうですが(笑)