■ツェルトとは
非常時に風雨をしのぐために被ったり、テントやタープのように設営するためのシートです。形状は色々あります。
素材や、フライシート(オプション)の有無に違いがあるものの、一般的には、防水性や、透湿性、居住性がテントより劣ると考えた方が良いでしょう。
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アライ スタンダードツェルト1(1995年購入) |
ツェルトを積極的に使いたい(つまりツェルト泊したい)理由をあげるとしたら、以下の2点でしょうか。
1.テントより軽量化が期待できる
2.テントより導入コストが安い(惜しみなく使える)
一方、ツェルト泊の心配事を挙げてみます。
・風雨に耐えられるのか
・居住性はどうか
・虫が侵入するのでは
…といったところでしょうか。
オプションにフライシートが用意されている場合がありますが、テント付属のフライシートのように全面を覆うものでは無いため、全方向の風雨を防げるわけではありません。また併用を前提として携行する場合、軽量化とは逆行します。
居住性については、元々が非常用としてコンパクトに設計されているため、とても悪いです。2~3人用という少し大きめのものが用意されていたり、オプションにインナーフレームが用意されているモデルでは、内側からフレームで支えることで、居住空間を確保できますが、いずれの場合も軽量化とは逆行します。
虫の侵入については、テントのように対策されていないため、多かれ少なかれ侵入はあると思われます。通常、床部分は紐で結んでつなぎ合わせるだけですし、ベンチレーターはただの穴だったりします。(ファイントラックのツェルトⅠ、Ⅱは、ベンチレーターにメッシュの網がついています。)
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床は紐で結ぶだけ |
■サイズと重量、価格の比較
では、国産の主なメーカーから、いくつかピックアップして比較してみます。
重量を重視しがちですが、居住性を比較するために容積が大きい順に並べてみました。(上位2モデルのみ2~3人用で、他は1~2人用です。)
※容積は、(間口×(奥行底+奥行天)×高さ)÷4で計算しています。
計算の結果、アライテントのスーパーライトツェルトが真ん中になりました。このモデルは、サイズ、価格、重量ともにバランスが取れていると思います。
これよりも軽いものは、生地を薄くしているか、生地の使用面積を減らす(=容積を小さくしたり、底部の生地の重なりを省略する)ことで軽量化を実現していると思われます。
原材料の違いか、販売戦略なのかはわかりませんが、同じメーカーの場合でも軽量タイプの方が価格は高くなっています。
アライのスーパーライトツェルト1よりも容積が小さいものの中で、モンベルのライトツェルトは、高さが10cm高いです。床面積が同じにもかかわらず、容積が小さくなった理由は、天頂部を絞っているデザインのためです。どちらが良いか、好みが分かれるところかもしれません。また容積の小さいモンベルの方が重量が重いので、生地の違いなども含め、現物を見て比較した方が良いでしょう。
それ以外のモデルは床面積が小さいので狭く感じるでしょう。どれも高さは90cmで同じですから、天頂部が小さいタイプはさらに狭く感じるはずです。
なお、アライのスーパーライトツェルト1より容積が大きいものに関しては、いずれも重量は増しており、価格も高くなっています。
Hiker's Depotというお店の「ツェルトⅡロングステルスVer.」は、ファイントラックのツェルトⅡをベースに、20cm奥行きを伸ばしたものです。今回比較した中では一番高価ですが、このツェルトは色合いが良く、素敵な仕上りになっています。
■オプションについて
①ポールは必要か
設営のために必要ですが、トレッキングポールを利用すれば、専用ポールを買わなくてすむかもしれません。
※トレッキングポールは折りたたみ式では無く、可変に伸縮できるタイプが良いでしょう。
※木を利用する案もありますが、立木を傷つけたくないですね。
②インナーポールは必要か
かさばるため携行したくないものの、個人的に一度は使用してみたいアイテムです。オプションとして用意されている場合で、予算が許すのであれば要検討です。
アライ 重量120g 価格4,935円 ※2~3人用ツェルト専用
モンベル 重量200g 価格2,800円 ※U.L.ツェルトは不可
ヘリテイジ 重量 90g 価格3,990円 ※スーパーツェルトS用
ヘリテイジ 重量110g 価格4,520円 ※スーパーツェルトM用
側面に張り縄をつけることができるモデルであれば、インナーポールを使用しなくても、張り縄でシート側面のたるみを防止することができます。本体の仕様を確認しておいた方が良いでしょう。(軽量タイプでは省略されている場合が多いため要注意です。)
③フライシートは必要か
ツェルト用のフライシートは長方形、または正方形のシートで、小型のタープとしても使用できるため、持っていて損は無いですが、ツェルトと併用するためにわざわざ携行するのであれば、最初からテントを持って行った方が良い気がします。ですのであえてツェルト泊を選ぶ場合は、フライシート不要として軽量化を図りたいです。
アライ、モンベル、ヘリテイジのフライシートは、いずれも奥行が200cmですので、ツェルトの奥行が200cmのものであれば、他社製のフライシートでも使える可能性が高いです。
アライ 奥行200cm 幅220cm 重量350g 価格7,035円
モンベル 奥行200cm 幅220cm 重量240g 価格7,200円
ヘリテイジ 奥行200cm 幅200cm 重量270g 価格6,500円
④ペグ、張り縄が必要
ペグは、フライシートを使わない場合でも最低8本は必要でしょう。(底部に4~6本と、ポール設置用に2本×2、さらに側面を引っ張る場合は追加で2~4本必要です。)もちろん石や立木を使用する方法もあります。
ペグは、アライテントのスティックペグが10g/本ですので、10本+張り縄で、150g~200gくらいで済むと思います。自立式のテントでもペグは4~13本くらい必要ですから、あまり差は無いと言えます。
⑤入り口はいくつか?
通常入り口のファスナーは片側のみとなっています。mont-bellのGORE-TEXライトツェルトや、ファイントラックのツェルトⅡ(Hiker's DepotのロングステルスVer.も同様)は、入り口が両方にあります。利点は、両方を開放することで換気をして結露を防止したり、フルオープンにすれば、タープのように使える点でしょうか。
■ツェツトの張り方
ツェルトやタープのように、2本のポールで両側から引っ張り合いながら支えるタイプのものを一人で設営するためには、ちょっとしたコツが必要です。
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ツェルトの場合は四隅をペグで固定しておきます。 (タープの場合は固定は不要です。)ポールに対して 45度の角度で、張り縄をペグで固定しておきます。 |
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自在で張り縄の長さを調整をしながらポールを立てて、 ツェルトを立ち上げます。反対側も同様に行います。 |
■最後に
ツェルトは自立式で無いため、設営の度に出来不出来に差がでます。そこに設営の楽しみがあるのではないでしょうか。上手くいけばきっと嬉しいはずです。設営が面倒だと言われてしまえばそれまでですが。
軽量化と居住性の両立を目指しつつ、雨で多少濡れることも想定して、シュラフカバーの併用など他の装備でも対策を行い、事前の天気や、山行の内容によって、テントと使い分けたい。つまり私の場合、必要以上に装備についてあれこれ悩みたいだけなのかもしれません(笑)
結局、ゴアテックスのシュラフカバーの併用や、トレッキングポールの使用を前提として考えた場合、ツェルト泊は、導入コストが安いとは言えないかもしれません。
メーカーが、ツェルトはあくまでも「非常用」と謳っているため、テントの代わりとして使うリスクは考えなくてはいけません。
これからテントを購入する方は、最初は少し高くても自立式で軽量の山岳用テントを購入した方が良いでしょう。
テントについては以前のブログに記しました。(装備について3 - テント)
ちなみに冒頭で写真を載せたアライのスタンダードツエルト1ですが、重量が600gちょっとあるナイロンタフタのツェルトです。1995年に購入しましたが、当時7千円弱だったと思います。最近のものと比べるとちょっと重たいのですが、安くて丈夫なため、理にかなったツェルトだと思います。
個人的には、あまり軽量コンパクトに偏りすぎて欲しくないため、間口110cm×高さ110cm×奥行200cm(天頂部も200cm)、サイドリフト用のループ有り、底の合わせ部分の重なりは大きめ、ベンチレーターにメッシュあり、入り口は前後2箇所、本体重量は400~450g程度、撥水性能そこそこ、ナチュラルな色(黄や橙のようなエマージェンシーカラーではない)、価格1万円弱…というスペックのものがあれば、嬉しいのですが。
今後、各メーカーのラインナップがもっと増えてくれると楽しいですね。
追記(2016年2月)
モンベルのライトツェルトと、ULツェルトがモデルチェンジするそうで、旧モデルが安くなっていました。
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モンベル ライトツェルト(左)とU.L.ツェルトの旧モデル アウトレットで安くなっていました。(2016年2月) |
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私が持っているツェルトの収納時のサイズ比較
左から、Newツェルト※(アライ)、シングルツェルト(アライ)、
ライトツェルト(モンベル)、U.L.ツェルト(モンベル)
※Newとありますが、ずいぶん昔のモデルです。 |
↓2015年にアライからも居住性の高いモデルが出たようです。(楽天へのリンクです。)
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