2025年8月31日(日)
クライミングジムに通い始めて1年と半月、ついにマルチピッチクライミングに挑戦する日が来ました。
行き先は、群馬県の子持山にある獅子岩という岩場で、いつもジムで一緒の友人Oと登ります。
今回登るルートは、本などの情報ではグレードは低く、比較的簡単なルートとされていますが、登った人の情報では、難しく感じたという感想もいくつか見かけました。
マルチピッチクライミングは、ロープの長さより高いルートを登る時に、ロープの長さで登れる高さで一度区切り、ロープの引き上げや設置した支点の回収をおこないながら複数回に分けて登るクライミングです。
一般的なクライミングルートにはハンガーボルトが打ち込まれていています。通常、2人1組で登ります。
最初に登る人はハンガーボルトに支点となるカラビナをかけていきます。ここで使うカラビナは、クイックドロー(ヌンチャク)と呼ばれる二つのカラビナをつなげたものになります。
ジムの場合、ロープを掛けるカラビナは最初から壁にぶら下がっていますが、岩場ではクイックドローを自分で掛けてから、ロープを掛ける必要があり、ジムで登る時よりもひと手間かかります。
![]() |
ジムの場合カラビナは壁に固定されています |
![]() |
クイックドロー(ヌンチャク) |
最初の人(リード/リーダー)が登るとき、自分につないだロープの末端は、ビレイヤーに繋ぎます。リードが登る時のビレイは、ジムで登る時のビレイと同じ要領でおこないます。
リードが終了点と呼ばれるピッチの区切りまで登ると、墜落防止のための自己確保(セルフビレイ)をおこない、ビレイヤーにビレイの解除をしても大丈夫なことを伝えます。
リードは余ったロープを引き上げます。余ったロープを引き上げた後は、そこを支点にして、次に登る人(フォロー)をビレイします。このビレイの方法をセカンドビレイと言います。ジムではセカンドビレイの機会がないので、この技術は別途覚える必要があります。
フォロー(2番目に登る人)が登りはじめるとき、リードはフォローと支点の間のロープの弛みをとっていきます。フォローは自分の頭上に支点があるトップロープクライミングの要領で登ることになりますので、リードよりも精神的に楽になりますが、フォローにはリードが設置したクイックドローの回収という大事な仕事があります。回収したクイックドローは自分のハーネスに掛けていきます。このように、基本的には自分たちが岩壁に設置した道具を残さず、回収しながら登っていきます。
フォローが終了点(リードがいるところ)まで登りセルフビレイをとったら、次のピッチを登る準備をおこないます。マルチピッチクライミングでは、このような手順を何度か繰り返して頂上を目指していきます。
さて、今回登る獅子岩ですが、大部分がスラブと呼ばれる、垂直よりはゆるい傾斜のルートです。私はジムの課題の中でもスラブが大得意なので、友人Oが私に最適ということで、この岩場を選んでくれました。私にとって、最初のマルチピッチクライミングなので、友人Oがすべてリードをし、私がフォローをする、という手筈でしたが、友人Oはスラブが苦手、私が大得意、ということもあり、友人Oからは事前に、リードをお願いすることになるかも、と言われていました。リードをするということは、最初に登り、終了点で支点を構築し、フォローをセカンドビレーする必要があるため、事前に予習をしておく必要がありました。
そんな感じで、当日を迎え、最初のリードは友人Oがおこないましたが、すごく手こずっている模様。序盤は緩い傾斜に見えますが、足の置き場に乏しく、登りにくい箇所があるらしく、そこで時間を要していました。友人Oが2ピッチ分登り、終了点についてから、いよいよ私の出番です。友人Oがつまづいたポイントでなるほど、「むむむ…」となりましたが、2番手は1番手よりは、精神的には楽ということもあり、なんとか通過しました。その後もなんとか自力で登り切ることができました。
![]() |
獅子岩。今回登るところはこの写真の右端の方です。 |
![]() |
傾斜が緩く見える1ピッチ目で苦戦 |
終了点につき、なんとなく自分に合っている壁なので、自分がリードをやった方が良いかもという思いが湧いてきて、3ピッチ目から最後まで自分がリードしました。通常、登れない時は、テンションと言って、下にいるビレイヤーに、ロープを張ってもらい、壁の途中で休むこともできますが、今回は何とかテンション無しで、自力で登り切りました。
![]() |
終了点の足元はこんな感じ |
![]() |
自分がリード、友人がフォローで登っています |
![]() |
フォローが見えない状態の時もあります |
獅子岩には一般登山道の山頂に出るための、おまけのような短い7ピッチ目がありますが、友人Oは山頂に興味はなく、7ピッチ目は登らず、片付けを始めていました。私に(一般登山道を使って)山頂に行って来れば?と促しました。私は目の前のクライミングルートの7ピッチ目に触れながら簡単に登れそうな感触を得ましたので、そのままロープ無しのフリーソロで登り切り、山頂に立ちました。
![]() |
獅子岩頂上 |
今まで一般登山で、このような展望の良い切り立った山頂に出た場合、落ちたら命の保証のない岩の淵に立ち、足を踏み外したら終わりだよな、なんて、思っていながら束の間の絶景を楽しんできましたが、今回は自分がその崖の向こう側を登って来たんだと思うと、今までのようにリスクを冒してまでも岩の淵に立つ気も失せて、何となく遠巻きに景色を眺めていました。その時、今まで感じていた山頂の楽しみを感じられなくなっている自分がいることに気がつきました。
そんなわけで、クライミングにハマっている自分が、初めてのマルチピッチクライミングを体験して、それなりの成果を得てクライマーの道に足を踏み入れたのと同時に、自分の登山のスタイルに何らかの変化が生まれたと感じた1日になりました。
クライミングで得るこの充足感はものすごく特別な感覚で、次の週末、ジムへ行くまでの1週間、獅子岩の事を反芻しながらニヤニヤして過ごしていました。
0 件のコメント:
コメントを投稿